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2008年度後期木曜ゼミ_その3

前回の更新からだいぶ間が空いてしまいました。現在、私たちは、Richard Taruskin による著書『Stravinsky and the Russian Traditions: A Biography of the Works through Mavra』の第5章「Bells, Bees, and Roma Candles」を読んでいます。今回からは、第5章の本論部分について紹介していきます。

第5章の本論は、ストラヴィンスキーが作った二つのスケルツォの比較からスタートします。一つは《交響曲第1番 Op.1》(1907年)の第2楽章の〈スケルツォ〉で、もう一つは序論部分で何度も取り上げられている《幻想的スケルツォ Op.3》(1909年)です。作品番号が示しているように、両方とも初期の作品です。

学資作品である《交響曲第1番》は、師匠であるリムスキー=コルサコフの厳重な監視の下で作られただけあって、それまでの一般的なオーケストレーションや調構成に乗っ取って作られています。これに対して《幻想的スケルツォ Op.3》は、ストラヴィンスキー自身の個性がもっと表面化した作品です。

著者のタラスキンは二つの作品を比較しながら、後の作品(《幻想的スケルツォ》)において、ストラヴィンスキーがいかに成長したかを語っています。特に強調されているのが楽器編成と、それによって生みだされる音色です。それでは、《幻想的スケルツォ》の管弦楽法がどうなっているのかを具体的に見ていきましょう。

まず管楽器の種類が非常に豊富です。クラリネットのD管やアルト・トランペットなども含めた多種多様な楽器が用いられています。人数自体も《交響曲第1番》よりかなり多くなっています。ただしチューバとトロンボーンは除外されています。つまり、木管楽器全般と、ホルン、トランペット、アルト・トランペットが用いられている状態です。

逆に、打楽器はシンバルのみで、しかもサスペンド・シンバルです(たたき合わせるのではなく、吊してマレットで叩く用のシンバル…のことだと思われます)。ティンパニもバスドラムもありません。これらの「軽い」楽器群に、チェレスタ、ハープ、弦楽器群を加えた編成で《幻想的スケルツォ》が作られています。

いかにも普通でない楽器の使い方ですが、タラスキンはこのことをストラヴィンスキーのオリジナリティとして高く評価しています。実際、このような手法によって、前回の記事で書いたような「蜂」の印象(浮遊感、飛行感、羽音…)が生みだされているのですから、確かに凄いことだと言えるでしょう。

ちなみにタラスキンは、《幻想的スケルツォ》のこのような逸脱したオーケストレーションを、《交響曲第1番》で師匠にさんざん注意され訂正されたことの鬱憤晴らしだと推測しています。どちらが悪いのか良く分かりませんが、リムスキー=コルサコフはとにかく弟子のモダンな作風が気にくわなかったらしく、何度も悪口をこぼしています。そのことについても、いずれ述べることになるでしょう。

次回の記事は、本論部分の紹介の続きで、ストラヴィンスキーが用いていた音階組織について触れる内容になると思います。
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