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2009年01月17日

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2008年度後期木曜ゼミ_その4

年を跨いでしまいましたが、前回の続きをまとめておこうと思います。私たちは、Richard Taruskin による著書『Stravinsky and the Russian Traditions: A Biography of the Works through Mavra』の第5章「Bells, Bees, and Roma Candles」を読んでいます(読んでいました)。今回は彼が《幻想的スケルツォ》の中で用いていた和声組織・音階組織について紹介します。

といっても、この部分はゼミで講読していた時に最も読みにくかった箇所であり、出席者全員が机に向かって唸りをあげて悩み通した危険地帯です。当時、柿沼研究室の前を通った人が、部屋の中から異様な熱気を感じるとか、逆に寒気を覚える等の体験をしていた場合、その原因は我々の発していた不健康なエネルギーにあります。そういうわけで、なるべくさらっと内容を復習したいと思います。

彼が《幻想的スケルツォ》の中で用いているのは、いわゆる機能和声ではなく、また12音技法でも無調でもありません。彼は主に「8音音階」と「全音音階」に基づいて全体の音楽を構築しています。これらの音階に関しては、ドビュッシーやメシアンによって用いられた例が特に有名ですが、こういった特殊な音階を楽曲の基礎とする作曲法はチェレプニン等を経由して日本にも輸入されました(by 竹内(D1))。

「8音音階」は全音と半音とが交互に配置されることで成り立つ音階です。たとえば、『ゲゲゲの鬼太郎』のオープニング・テーマ(C, C, Es, F, Fis)がこれに近いです。CとEsの間にDを入れると8音音階の前半分になります。また『世にも奇妙な物語』のテーマ(D, E, F, G, Gis)も、似た音階を使用しています。つまり、聴く側にすこし不気味な、ゾッとするような印象を与える音階だと言えそうです。

「全音音階」の方は、その名の通り全音のみによって構成される音階です。ドラマやアニメの中で、回想シーンに入る際の効果音として、よく用いられたりすると思います(すこしクドイ使い方ですが)。初代『鉄腕アトム』のオープニングの開始直後にも登場しています。基本的には不安定な感じを醸し出す効果を持っているようです。これはむしろドビュッシーの作風を考えると分かりやすいかもしれません。

ストラヴィンスキーは《幻想的スケルツォ》の中で、これらの音階を分割したり和音の中に混ぜたりしながら、縦横無尽に用いています。具体的には、8音音階を4音ずつ分けて提示したり、和音が3度ずつ移行しながら堆積するパッセージ(third-rotations)の構成音として使っているようです。リムスキー=コルサコフやフランツ・リストに関しても近い例が紹介されているのですが、徹底しているのはやはりストラヴィンスキーの方です。

《幻想的スケルツォ》には、一つのパッセージの中で4種類の音階を同時に、異なるレベルで(全体の構成音、高音域、低音域、堆積和音、といった風な)用いている非常に複雑な箇所もあります。このことを著者のタラスキンは「悪魔的にクレバーな混合」として高く評価しています。またタラスキンは、「このことは、リムスキー=コルサコフのグループにとって、合理的に説明のつく非機能的・半音階主義の極地と思われたに違いない。また、それゆえ、ドイツやフランスにおける『頽廃』に対して『進歩的』と見なされた事だろう」とも述べています。

おそらく、これらのことが、師匠であるリムスキー=コルサコフからある程度受け継がれている、というのが本書のポイントの一つだと思われます。しかし一方で、彼は当時流行のモダニズムや印象主義に片足を突っ込んでいたため、師匠からは批判されっぱなしだったようです。そのようなエピソードが第5章の後半で色々と書かれています。やはりどのような天才であっても、何かしらの気苦労は抱えているようです。私も頑張って生きていこうと思います。

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